2011年7月15日金曜日

NAGRAのメインテナンスとアップグレード

テープレコーダの場合、ピンチローラや、ゴムベルトは消耗部品なので交換用の予備部品を持っていると安心だ。NAGRA III 型のピンチローラは黒ゴムだったが、IV型からはシリコンゴムになっている。耐久性は極めて高く、軸受けはボールベアリング。
保守用ピンチローラ
NAGRA IV型の標準のテープガイドはアルミ製。当然、ヘッドと同じように長期間使えば磨り減ってくる。写真は何年か前、入手したルビーガイド。テープの上下位置を規定する部分は硬度の高いルビー。テーブの当たる部分は硬度の高い金属になっている。なお、この金属部分もルビーにした高級?テープガイドもたまに見かける。が、入手できていない。
ルビーガイド1

ルビーガイド2
 ジャンクNAGRAから部品取りしたパーツは予備部品に。最近では少なくなったが、何年か前、NAGRAの保守部品がeBayによく出品されていた。リール台やそのベアリング等も入手したが現品がまだまだスムーズに動いているので出番がない。なお、ピンチローラ、リールベルト、テンションローラ、ストロボローラなどIII型とIV型で共通に使える部品も多い。また、IV-SJ型とIV-Dや4.2型は内部の駆動メカニズムはほとんど同じ。価格の安いモノラル仕様のIV型を手に入れて部品取りするのも妙案だ。
保守部品

2011年7月12日火曜日

STELLAVOX改造NAGRA用電源

eBayで入手したジャンクのSTELLAVOX電源をNAGRA用に改造した。出力電圧は直流マイナス18V。もとのSTELLAVOXの回路は、トランスとパイロットランプを残して廃棄。新たに作り直した。
NAGRA用電源

左下が出力コネクタ。その上が2次側パイロットランプ。BNCコネクタは出力電圧チェック、モニタ用。
左下が出力コネクタ
 交流電源入力はケーブルが取り外せて便利な3Pインレットに変更。左上がヒューズ。その横が電源ON/OFF用トグルスイッチ。
3Pインレット

中央のベタプリント基板にブリッジ整流器と電解コンデンサ。レギュレータはLM337を使用。中央のアルミ板に放熱。(最終的にはケースに廃熱)
中央がレギュレータ

中央がステラボックスのトランス。もともとは切り替えにより200V等も対応できるが100V(115V)専用の接続に改造。左下の赤いのはネオンランプ。
中央がトランス
2次側のパイロットランプは抵抗を入れて超低輝度で動作させている。暗いが電球が切れる心配なし。
コンデンサには防振シリコンゴム

2011年7月10日日曜日

上諏訪呑み歩き(2011年7月9日)

朝6時半に出発、新宿からあずさ3号で松本へ。国宝松本城を拝見。
松本城
 超急傾斜の階段。1段のステップが半端でない。上るのはいいが、降りるのは…
松本城階段

天守閣からの眺望はすばらしいが汗が吹き出る。
松本城からの眺望

昼食の蕎麦、手打ちだったが、やはり蕎麦は冷たい水が潤沢に使える蕎麦屋がうまい。
昼食の蕎麦
 汗を流すために立ち寄った衣温泉。入浴料は200円。
衣温泉
 由緒ある雰囲気の天井。
衣温泉天井
 衣温泉の入り口。猛暑で汗だくでなければ立ち寄らなかっただろう。
衣温泉入り口
 謎のオブジェ。消火栓のようだが?
謎のオブジェ

猛暑のためか、人手は例年の1/3程度か?
舞姫酒造

本金
 暑さにもめげず、試飲につぐ試飲。
灼熱の呑み歩き
 猛暑で一番うまかったのは、仕込み用の水だったかもしれない。
舞姫前
 日本酒を飲む前に冷えた生ビールを飲みたかった。やはり、呑み歩きは春、秋が適している。ちなみに今回の呑み歩きは3月19日開催予定だったが、震災のため中止。7月9日開催となった。
アルコール補給

2011年7月7日木曜日

Nagra III の改造

NAGRA III は1963年発売の製品。そのスムーズなテープ走行や職人芸的な機械加工と精度は、見ていて飽きない。III型とIV型は共通に使える部品も多いので少しだけ?改造してみた。残念ながら内部の電子回路は非常に巧妙に設計されており、改造は難しい。
NAGRA III 改
 NAGRA 4.2のメータに交換してみた。III型と感度は同じ。その横のシンクロインジケータも4.2用に交換、出っ張りがなくなった。
NAGRA4.2のメータに交換
 インピーダンスローラをテープカウンタに交換。リール台の回転数でなく、テープの走行長を測定しているので慣れれば残時間カウンタとしても使える。
NAGRA4.2のテープカウンタに交換
 ベルトを交換。ただし、モータおよび取り付け台を外す必要があり、思ったほど簡単には交換できない。モーターケースはピカールで磨いたら、まさにピカピカになった。
ドライブベルト交換
 入手時には既に取り付けられていたネオパイロット用の50/60Hz水晶発振回路基板。映画の絵と音が1秒もずれたら話にならない。ネオパイロットは録音時に特殊な方法で50または60Hzを記録しておき再生時は外部からの50Hz 60Hzに同期するようテープ速度を制御する究極の方法。これによりテープの続く限り、ビタ0.1秒ずれることはない。なお、4型以降のステレオタイプは第3の専用トラックを設けて同様の信号を記録している。あたりまえだが、このトラックの周波数をカウントすれば正確なテープ位置(時間)を知ることができる。
50/60Hz 水晶発振器
 ベルト交換時リール台も一部外す必要があるが、外すとテンションの調整が非常にシビアかつ難しいことに気がつく。
マイナスネジは6角ネジに交換
 NAGRA ATNのケースとトランスを利用したDC電源。ケースは鉄製。塗装は剥がして磨いた。
NAGRA ATN を改造したDC電源
 交流入力は計測機では一般的な3Pインレットを採用。
AC入力はインレットに交換
 トランスが大きく、インレット等必要な部品を押し込めるのに苦労した。電解コンデンサ等、もとの部品は経年変化で劣化しており、トランス以外の電気部品は再利用しなかった。
トランス以外は全て変更、交換
 詰め込むのに苦労した2次側整流回路。
隙間に押し込んだ電解コンデンサ等

2011年7月5日火曜日

Nagra III  IV のモーター

NAGRA モターの構造と交換用電気ブラシ
NAGRA III および IVに使用されているモータはブラシ部のわずかな違いを除いてほぼ同じ。定格電圧は15V、電流は10~15mA(無負荷)で、サーボをかけなくとも驚くほど静か、かつスムーズに回転する。
NAGRA III の モーター
 重量は612グラム、12極DCブラシモーター
12極回転子

キャプスタンはモータ下部の軸受けと最上部の軸受けで支えられる理にかなった設計。このためピンチローラが当たってもまったくぶれない。フライホイールの重さは240グラム。周囲のミゾ(歯車)は回転検出用。磁気ヘッドで回転を周波数に変換、この周波数が一定になるようサーボをかけて回転を安定化する。
ダイレクトドライブのキャプスタン

 ブラシは2重(わずかに相をずらして)になっているのが特徴。IV型では2重ブラシは廃止されている。ブラシの材料はグラファイト?ブラシからの雑音防止用に0.1マイクロのコンデンサが入っている。(写真 中央の赤色がコンデンサ)
III用モータのブラシ部
 超マニアックな巻線。NAGRA IIIは1963年ごろの登場。その当時、これほどのモータを作れたのは脅威と言うしかない。
内部の巻線部分
NAGRA IVではブラシは1組になり、雑音除去用のコンデンサの代わりにコイルが追加されている。
NAGRA IVのモーター
おまけとしてNAGRAのライバル、STELLAVOXのモータも紹介しておく。どちらもダイレクトドライブだがステラボックスのほうがキャプスタンが細く、半分くらいの太さ。従って同じテープ速度ではステラボックスのほうが高速回転になる。モータのスピード検出はランプとフォトトランジスタによる非接触光検出方式。直径はやや大きいが厚みはNAGRAの1/3の薄型。
ステラボックス(SP-7)のモータ
ブラシが6個あるのが特徴。中央赤色の電線の先にブラシがある。ブラシの先は22Ωの抵抗があり貫通電流を防いでいる。NAGRAのブラシは消耗したら交換可能だが、こちらはモーターごと交換が保守のポリシーらしい。
ステラボックスのモーター

2011年7月4日月曜日

Nagra IV-SJ ヘッドフォンアンプの改造

ヘッドフォン出力のステレオ改造
IV-SJの欠点?のひとつがヘッドフォンのモノラル出力。配線の変更のみではステレオ化できないのでアンプを追加している。ヘッドフォンの音量調整は出力にロータリスイッチを用いたアッテネータ型としている。このため、音量を小さくしてもアンプは常に大振幅動作しており、ひずみや雑音が増加しない。


フロントパネル
一番左がヘッドフォンの音量調整スイッチ。その右は内蔵スピーカの音量調整ボリューム。ツマミはジャンクで購入したステラボックスのツマミを採用。

自作ヘッドフォンアンプ
中央部の基板が自作ヘッドフォンアンプ、GNDプレーンに空中配線で実装。

Nagra IV-SJ の改造



NAGRA IV-SJ 1980年代のマニア憧れのアナログ式テープレコーダ。当時はラジオ技術等の雑誌のグラビアに紹介される程度の存在だった。しかし、グラビア写真だけでもメカ好きには、たまらない精密感が伝わってきた。価格も国産最高級テレコの10倍。学生にはとても手が出なかった。 さて、今から約10年前、念願のIV-SJをebayで入手した。($1500+送料$150)程度は、あまり良くなかったが、気に入らない回路は再設計し、ピンチローラやベルトは米国の業者から取り寄せ交換した。7インチ用のLIDは格安落札の4.2よりの部品取り。
NAGRA IV-SJ

ダイレクトドライブのモータの静粛性は、さすがスイス製。ピンチローラやほとんどの軸受けは精密級ボールベアリング。
フタを開けた状態

内部配線はほとんど全て交換。必要のないマイク用のDDコンやパイロット信号用の基板は削除。B級動作のスピーカアンプ、中間アンプは自作品と交換。ヘッドフォンアンプを追加してステレオ再生に。メータ照明は切れる心配のない白色LEDに。またスピーカモニタ時の音量調整VRを追加。入力の初段をFETに改造したので電源投入後の安定もすばやくなった。
改造した内部

電源コネクタは日本ではDIN仕様?のタッシェルコンは入手難なので国産の3Pコネクタに交換。同じくebayでジャンクのステラボックス用の電源を入手。トランスとケースのみ再利用してNAGRA用電源(-18V)を作成した。次回は、もう少し詳しく改造部分の回路について書く予定
ステラボックスの電源を改造